「タマフル映画祭2015“さわやかボーイズ・ムービー”2本立て『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌』『脱獄広島殺人囚』  with コンバットREC!」
 
観に行ってきました。
 
チケットの発売時刻、ぼくは青春18きっぷを使って旅行の最中でした。
 
昨年(「太陽を盗んだ男」「新幹線大爆破」)は販売開始時間である0時きっかりにチケットぴあへログインし、自分用の良席(F-14)を確保したあとは残席がどのように売れていくのかF5アタックで見届けるという具合だったのですが、今年はその時間岩手県大船渡市山中に存在するインターネットカフェを探して峠を歩いており、店に入ってからもその事を忘れたまま眠りにつきました。
 
次の日、旅行の目的である陸前高田「奇跡の一本松」ポータルをIngressで落として満足したぼくはそこから鈍行列車で11時間ほどかけて自宅へ戻ったのですが、結局その日も疲れて寝てしまいました。
 
「もう完売しているだろうから今年は行けないな」とすっかりあきらめていたぼくはチケットぴあで確認する事もしていなかったのですが、それからしばらくしてtwitterに「チケット残りわずか」というツィートが飛び込んできました。
 
「良かった!買える!ありがとう思わしくない売れ行き!」
 
そう思いながらチケットをオンラインで購入しました(その後チケットは無事完売)。書籍セットを買うとぼくの晩飯が当分オカズ無しになってしまうので、とりあえずチケットだけ。後ろの方の席となりましたが、スクリーン中央らへんが取れたので満足でした。
 
当日。余裕を持ってバルト9へ出発したら1時間ほど前に着いてしまったので、とりあえず晩御飯を食べる事に。向かったのはいわもとQ。天ぷらセット大盛りを注文。ビールが呑みたいのをグッと堪えます。
 
「このあと呑むビール1杯はここより倍ほど高いのだから、無駄使いしてはいけない……」
 
そう自分に言い聞かせては天ぷらをつまみ、そばをたぐりました。美味しかったです。
 
店を出てから近場のコンビニでストロングゼロレモンを買って呑み、程良き時間でバルト9入場。発券機にQRコードをかざしてチケットを確保したら、お待ちかねのビール購入タイム。お腹いっぱいですので他のおつまみは結構。メニューにあるビールの写真に沿えて書かれている金額と同額の貨幣をレジへ支払うと、係の人は嫌な顔一つせずビールを渡してくれました。
 
忘れていました。尿意です。もう開演まで時間がないのでビールが並々と注がれたブラコップを持ったままトイレへ直行。脳内で「われは海の子」を歌いながら無事放尿完了。トイレを出る際にぼくの持っているブラコップを見てびっくりする人がいましたが、ご安心召され、中身はちゃんとビールですゾ……。
 
入口で奇譚クラブさん提供のガシャを受け取り、席に着いてからしばらくすると、場内が暗転。「ムービーウォッチメン」コーナー冒頭でお馴染み、「映画館では毎日……」のくだりがスピーカーから聞こえてきました。その声の持ち主は誰あろう、そう、ライムスター宇多丸さん! TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」のパーソナリティでもあり、この映画祭になくてはならない人物です!
 
「思えば初めて参加したタマフル映画祭(シネマハスラー的必修アニメ特集)の時は最初マイクのスイッチが入ってなくて、登場口付近から宇多丸さんの生声が聞えたんだよな……」
 
口上を聞きながらそんな思い出に浸っていると、スポットライトが! 光が照らすその先にいたのは……そう、ライムスター宇多丸さん! TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」のパーソナリティでもあり、この映画祭になくてはならない人物です! そしてそして、何と室内照明が再点灯! 普通映画館での暗転は上映を意味しますが、一筋縄でいかないのがこの映画祭の良いところ。「早く本編が観たいゾ」と興奮するぼくたちを焦らすかのように、トークコーナーが始まりました。
 
ステージ上にはライムスター宇多丸さん(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」のパーソナリティでもあり、この映画祭になくてはならない人物)をはじめ、今回の二本立て作品をチョイスしたコンバットRECさん、構成作家古川耕さん、番組アドバイザーせのちんさん、そして出産を控えたしまおまほさんがいらっしゃいました(しまおさんは途中退席。そのほかBUBUKA編集長サミュエルさんの飛び入りもありました)。
 
さてタマフル映画祭本編、
 
1本目は「映画感想:ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌」( ぼくの感想 )
2本目は「脱獄・広島殺人囚」( ぼくの感想 )
 
でした。
 
途中に休憩とトークを挟みながらも、あっという間の約5時間でした。出口に向かいながらぼくは「去年は大雪だったな」と、心の中で前回のタマフル映画祭を振り返っていました。
 
去年。
映画が二本終わり、最後のトークは長いものとなりました。袖から何度も何度も送られていた「お願いですからそろそろ締めてください」の指示をガン無視し、最後には今する必要は全くない駄話を宇多丸さんがダラダラと喋り続けていたのを覚えています。でもそれには理由があって……その時点ではまだ、始発は動いていなかったのです。この大雪の中、折角集まってくれたタマフルリスナーを、時間だからと無下に追い出すわけにはいかない……。本当のところは分かりませんが、宇多丸さんはそう考えているのだろうとぼくは思いました。
「列車の運行で困ったり、ローリング・ストーンズを呼んだふりして騙されるのは映画の中だけで充分……」
サングラスの向こうの宇多丸さんの目が、ぼくたちにそう語りかけている気がしました。宇多丸さんは「映画と現実は違う」という事を充分にわかったうえで、ぼくたちいや俺たちを、本当に時間ギリギリまで、温かい、暖房の効いた、俺たちの新宿バルト9に留めてくれたのです。
 
そんなことを思い出す一方で、コンバットRECさんが今回この二本を選んだ訳を考えていました。
 
どちらもが、諸般の事情により、色んな条件付きで制作された映画でした。
 
「ビー・バップ」に関していえば、企画が出た以上それを誰かがやらなければならない代物。作家性よりもオリジナリティよりも、周りの諸事情が一番重視される映画が作られることだってある。だけどそれを生業とする以上、どうにかしてそれをかたちにしなければならない。
しかしだからといって、決して手を抜いたりしてはいけないのだ。厳しい条件をかいくぐり、譲れない部分をあえて妥協し、結果どう考えても整合性の取れない作品に仕上がったとしても、その中で自分が注力した部分は必ず光り輝く。誰かに届いている。「つまんなかったけど、あそこだけはよかった」と褒めてくれる人がいるかもしれない。
 
また「脱獄・広島殺人囚」はWikipediaによれば、元々は松方弘樹がNHK大河ドラマを途中降板した渡哲也の代役を打診された際、松方を推薦した本作の監督である中島貞夫から「帰ったら一本映画を用意しておく」と約束されて作られたものだという。
そうして引き受けた代役は松方とっては不本意なもので、NHK製作陣との確執もあった末戻ってきたが、用意された公開スケジュールは「捨て週間」と呼ばれる正月前だった。
しかしそのように不利な条件をものともせず、「脱獄・広島殺人囚」は大ヒットした。それはその理由は今回鑑賞したタマフルリスナーであれば言わずもがなだろう。無茶苦茶だけど面白い、この一言に尽きる。
 
仕事に家庭に疲労し、逃げ込んだインターネットカフェで頭を抱えるRECさんが「脱獄・広島殺人囚」を観て元気づけられるというのは、単に主人公の自由を渇望する姿勢に共感しているだけではなく、「どんなに不利な条件がついていいる問題でも、信念を持って対峙すれば思った以上の結果が出て解決する……こともある」という勇気をもらいたいからではないだろうか。
 
作品の裏に隠された演者/クリエイターの苦悩を自分の社会生活における仕事上での葛藤などに置き換えてみたりすることで、生きていくうえで現実と向き合う力となる映画もある……。本編以上にRECさんがこれらの作品を今回推したのは、実はそんな理由ではないかと想像した、知らんけど。
 
 
「何ならヒーローものも有り」とライムスター宇多丸さん(TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」のパーソナリティでもあり、この映画祭になくてはならない人物)はおっしゃっていたので、それが叶うならば来年は「仮面ライダーV3対デストロン怪人」を、あの数々の大爆発シーンを、劇場のでっかいスクリーンで観てみたいなァと思う次第である。32分しかないんで、あっという間に終わっちゃうけどね。
 
また来年~(⌒ー⌒)ノ~~~